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日本園芸生産研究所と日本蔬菜育種協会のこと

日本園芸生産研究所会議室(仮設当時)での新品種研究会風景
背広姿の育種協会会員と作業着の園研技術陣が一堂に 2000.11.30 (Photo by Noguchi)

日本園芸生産研究所は、千葉県松戸市紙敷の市立松戸高校の隣に所在する財団法人です。
(2012/10/1に「公益財団法人園芸植物育種研究所」と、名称が変更されました)


戦後すぐの1949年、千葉大学園芸学部の外郭団体として創立され、1952年に財団法人化され、「蔬菜の品種改良に関する研究」と「育成品種の種子の配布と生産指導」を中心事業として、独自の発展を遂げてきました。3年に一度「蔬菜の新品種」という全国で発表された新品種を概観できる本(うちにある最新刊は第16巻/2006年版)を編集・出版していて、種苗業者や研究者にとって貴重な基礎資料となっています。

財団法人ですから、自ら宣伝して販売事業を進めるわけにいかないので、育成された品種は、種苗業者を通じて販売・普及してもらっています。 園研が育成した品種を試作したり、普及指導する力を持った種苗業者で組織されたのが、日本蔬菜育種協会でした。(現在は解散し、協賛企業となっています)

千葉大学園芸学部には、全国の有力種苗業者の後継者が多く学んでいます。(僕自身、小さい頃は「千葉大を目指せ」と父に言われて育った不肖の息子でした)
まず卒業生を中心に、都道府県一名ずつを目安に、最初の日本蔬菜育種協会メンバーが生まれました。
その後、各県1名ずつでは少ない。会を維持し、品種を普及するには最低2名は必要だ。ということで、千葉大卒業生以外にも、メンバーの推薦により門戸が開かれることになりました。この時当店も、埼玉県2番目のメンバーとして仲間入りし、園研品種の普及を図らせていただくことになりました。

 父に代わって僕が初めて参加したのが約30年前、甲府で研究会が開かれた折でした、まだご健在だった藤井所長にご著書をいただき、「サインしてください」と突き返して、居並ぶ渡辺頴悦さん(株式会社渡辺採種場社長・元日本種苗協会々長)など種苗業界の大先輩たちに「俺たちにはあの度胸はない。雲上人なんだよ、あの人は」と、あきれられたものでしたが、当時は本当に、千葉大学名誉教授・元園芸学部長の藤井健雄博士が、「日本の野菜の父」と呼ばれる蔬菜園芸学の大権威だということも、まったく知らなかったのでした。(汗)
それから数年、「ゆうやけトマト」や「つくば胡瓜」といった当時の新品種パンフレット制作のお手伝いをして、育種協会にも多少馴染んだ頃、関東種苗生産協議会という採種業者の集まりが茨城であり、当時のサカタのタネの生産部長さんと宴席でごいっしょした機会に、「サカタさんは園研の種をけっこう販売してらっしゃいますが、園研品種の一番の特徴は何でしょう?」と、お聞きしました。実はパンフ制作時の耳学問などから、「耐病性」という答えを期待していたのですが、お返事は、意外にも全然違うものでした。
「それは、味です」
と、いかにも当然といった顔でおっしゃったのです。
「我々メーカーは、今は、市場の規格に縛られて、色や形にとらわれた育種を前提にせざるを得ません。日本の野菜の味を良くすることを優先して育種研究しているのは、この種苗業界で、今や園研さんだけなのです」と。

確かに、あれから20年以上たった現在も、扱わせていただいている園研品種は、ピーマンではウィルス抵抗性の強い「にしき」から耐病性と多収性を受け継いだまま、柔らかで食味の良い「あきの」や「みはた」に進化していますし、トマトは、露地栽培できる複合耐病性品種の「ゆうばえ」から、完熟系で美味しい「ちあき」(現在は絶版)が生まれ、さらに今や高糖度で受粉しなくても実が成る単為結果性のミニトマト「ネネ」まで誕生しています。

当店は野菜産地に立地していないので、これまでせっかく美味しい園研品種を取扱わせていただきながら、家庭菜園向きの固定種野菜種子に特化しており、F1は、地元の家庭菜園の求めに応じた小袋詰めと、苗の小売販売しかしておりませんでした。(現在は、苗は取扱っていません)
当然地域の家庭菜園需要には好評で、「美味しい露地野菜用のタネと苗」として定着しておりました。が、反面、量的普及のお役には、まったく立てて参りませんでした。
できれば今後は、固定種ばかりでなく、園研品種も、このページを通じて取り扱い、市場流通野菜がより美味しくなるようなお手伝いができればいいな。と、考えています。
園研育成品種ばかりでなく、家庭菜園の露地栽培に適したF1野菜種子がもしあれば、追々紹介していきたいと思っていますので、その時は、伝統野菜の固定種同様よろしくお願いいたします。


[ ひとりごと ]

園研の歴史や、藤井先生の肩書きなど、ちょっとあやふやなところがあったので、
一度見ていただこうと思いつつ見切り発車でUPしてしまいました(2002.01.25)

ご連絡いただいて細かい部分の訂正ができました。ありがとうございます。(2002.8.2)

園研の名称変更に伴い、文章を若干修正しました。(2013.1.21)


〒357-0067 埼玉県飯能市小瀬戸192-1 野口のタネ/野口種苗研究所 野口 勲
Tel.042-972-2478 Fax.042-972-7701  E-mail:tanet@noguchiseed.com


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